紐ができるまで
FLOW
暮らしと「ものづくり」を紐で結ぶ
だあーー、ざあーー。
たくさんの製紐機(せいちゅうき)がいっせいに稼働する工場内は、
ひとの声が通らないほど大きな音が響いている。「滝でも流れてますか?」初めて訪れる方は驚くように言います。
組むのは機械ですが、品質を左右するのは職人の感覚や経験です。
感覚を研ぎ澄ませて、機械の音や湿度の違いから生まれる変化を察知する。
私たちは今日も、紐(ひも)と向き合い、ものづくりに励んでいます。
1.管巻き
仕入れた綿糸を管に巻いていきます。
原糸を2~4本とさまざまに合わせることで、紐の厚みや仕上がりに違いを出すことができる。
糸の特性を熟知した上で、湿度や天候の変化によりハリ具合が異なるため、ひとの手の感覚と機械と伴って均等に巻くことから紐づくりが始まります。
2. 製紐
綿糸を巻いた管を製紐機にかけます。たくさんの糸が紐へと変わる工程。
糸を繋ぎ足す際にキズをつけないように、結び目が出ないように、紐の織り上がりに神経を注ぎます。
次々に流れ勢いよく回転していく生成(きなり)の糸の中でわずかな不良を見つけるのは高度な技術が必要です。
組目が非常に細かいのが特徴ですが、糸の量は増え、出来上がりは少なく時間もかかる。組み上がるペースは8時間あたり60~70m。効率は悪くなり、コストもかかります。しかし、密度が増した紐は風合いがあり仕上がりに圧倒的な差が生み出されます。
3.綛巻き
紐を種類ごとの長さで輪状に巻いていきます。
蝋引きや染色がしやすいようにキレイに巻きます。
次の工程のことまで考えて動くことで、必ず良いものができる。
小さな思いの積み重ねが、完成した時に大きな差になることを忘れません。
4. 染色
工場から車ですぐの場所にある染色屋さん。創業当初からの長いお付き合いがあります。
富士山の伏流水を用いることで、
地元の恵みをまとい、色鮮やかな色彩へと変わります。
今も尚、紐づくりができるのは、昔から地場産業として続くつながりや人脈、自然の恵みのおかげです。その整った環境への感謝は欠かせません。
5. 蝋引き
機械に掛けて、職人がこだわりを持ち手作業で蝋を一層一層塗り重ねることで、紐の「穏やかな気品」のある美しさ、艶とハリが生まれます。
自動回転をつけただけのアナログな機械を扱うだけに、音・振動・感触といった五感でわかることが重要になる。
大きな音が鳴り響く中、各機械音の異変を見分けて手直ししていく。これは相応の経験が必要で、この工程をおろそかにすると毛羽立ちの少なさや滑らかな肌触りを得ることができません。
紐を使ってくださるお客様を思いながら、心を込めて仕上げていきます。
6. セル付け
靴紐の先端部のセルチップを付けながら、紐の長さを決めカットしていきます。
紐の太さで刃を替え、気温や湿度で接着剤の配分を調節し、紐にまとうセルチップの一つ一つに注意します。
機械だけでなく人の目によって正しく生産しているからこそ、細部まで行き届いた丁寧なものづくりを徹底しています。
7. 仕上げ
お客様のご要望の長さに切り分けます。
指先に紐が通る感覚と目視で、少しのキズ、汚れも見逃すことはできません。
どの工程も重要で職人同士のハイレベルのリレーにより作り出されています。